この7月は,これまで蒔いた種たちが芽吹きだしたのを
目の当たりにした1ヶ月であった.
いくつかある関連性の無いはずのテーマがそれぞれ
タイミングを同じくして,芽を出し始めた.
これから若い芽を大きく成長させるために,
神経をすり減らす日々がしばらく続くことになるだろう.
種たちは,深く耕した土にまいたつもりだ.
せっかく芽吹きはじめたものを容易に枯らすことはないようにしたい.
振り返ればこの10年で,仕事として作るものが大きく変わった.
この5年間が大きな端境期だったのかもしれない.
それらは既に消え去って再び帰り来ぬものではないのかと
この頃では,そのように思っている.
拠り所にしていたものがなくなることというのは,
急に裸一貫で野外に投げ出されたような心地がして
とても恐ろしいことだが,こだわりを捨てて前に進まねばならない.
新しい付加価値を生み出す未知の領域に踏み出さねば,
盤石だと思っていた足元は,溶けてなくなって奈落の底に落ちていく.
砂のように脆い道だとしても前に進まねば,
今を維持することさえも許されない.
いつの間にか世の中は,ずぶんと厳しくなったものだ.
寄りかかるべき大樹だと思っていたら,
中身が腐って倒れそうだという話があちこちから聞こえてくる.
たとえ小さな芽であっても大地に根を張り巡らし,
スクっと立ちつづけていたいものだ.
有島武郎 「小さき者へ」 小さい自分に勇気をくれる名著の一つ