2010年10月20日水曜日

努力と成長

「人に生まれたからには立派に生き続けるため
絶えず努力しなければいけない.」

これって小さい頃から心のなかに叩き込まれていて
努力すればいつかは必ず報われて
今よりきっとよくなると自分の深層心理は
固く信じているのです.

でもそれは単なる信念であって
生きる知恵であるにすぎないから
現実にはそうならなくて裏切られることも実際ある

努力して報われる社会の枠組みを用意することは
国家というスケールにおいて,
国民に幸せという利益を享受させるため
重要な政策課題であるに他ならない.

では努力して報われる社会を維持するため
国家は何を為すべきなのだろう.

努力して報われる状態というのは,
努力によってもたらされる成果が
自他共に進歩として認知される状態という視点で捉えるならば
努力する状況を取り巻く環境は,
程度が低いほうが都合がいいのは自明だ.
しかし継続的な努力による進歩は,
いつか飽和をもたらす.

それは多少の努力では進歩どころか
価値さえ産むのが難しい状態だ.

そして既に存在する価値は,人々に飽きられ
時間と共に猛烈な勢いで価値は
自動的に劣化していくから
現状を維持するためだけでも
多大な努力が必要な状態というのが
飽和した状態といえる.

国家が国民に努力して報われる社会を継続的に
提供するためには,この飽和した状態を打破する必要があるのだ

そのために国家は,一体どんな政策カードをもって
いるだろうか.

歴史と今の国家がとる政策を参考にすると
価値の飽和した状態をのりこえる方法は
次のいずれかの方策しか見つかっていないようにみえる.

(1)さらなる努力を促す
(2)価値を売り込む先の開拓
(3)既存価値の破壊

もっとも望ましいのは(1)さらなる努力によって
新たな成長手段や方向を得ること.
産業革命やエコ政策はこれに他ならないだろう.

しかし(1)は,発明や発見が必要だから現実に難しい
だから国家は(2)と(3)の方向性を探ることになる.

今アメリカは,ドルの量的緩和政策を進めているが
それは,努力せずに成長機会を得るための方策といえる.

自らの価値を低く貶めて,他の国家から見たときの
価値に対する対価を下げることによって
価値を売り込む先の開拓をしているのだ.
国家の中における価値を落とさずに
他の国家から見た時の価値を下げることは
平和的な方法で自らの既存価値を破壊しているといえる.
まさに(2)(3)を同時に行なうのが量的緩和政策なのだろう

でも量的緩和政策が成り立つのは,
自分以外の国家が同じ政策を行わない必要がある.

アメリカの中央銀行がじゃぶじゃぶドル紙幣を印刷して
みんなが簡単にドルをもらえる状態にしているから,
ドルの価値は今猛烈な勢いで下がってる.
そして相対的に他の通貨の価値が上がってる.

今,70円台に突入しそうな円とドルのレートを90円ぐらいに
戻してもらうためには,ドルの価値を上げてもらうか,
ドルと同じように一万円札をジャブジャブ印刷して
皆が簡単に円を稼げる状態にして
円の価値を下げるのかのいずれしか方法は無いのだけど
アメリカは自国民の努力が報われる社会を提供するため
ドルの価値を核心的に落としているのだから
日本が何もしなければ,しばらく円高は維持されるだろう.

僕たち日本人が努力して報われる環境を取り戻すには
どうしたらいいのだろう.
円の価値を落とすことも難しいし,
新たなる売り込み先といえども
日本の提供する価値への対価が高いからには
新興国に日本製品を売っても暮らしていけない.

結局のところ我々日本人に残された道は,
さらなる努力をすることだけなのだ.

先人の日本人が休まず働くアリに例えられたほどの
努力家であったことは疑いの余地がないだけに
それ以上の努力が今の我々に可能なのか
チョット自信がない.